理事長あいさつ

理事長 山本哲也  日本緑内障学会理事長の山本哲也(所属:岐阜大学大学院医学系研究科眼科学)でございます。昨年(2018年)4月に役員、評議員が改選され、新しい陣容で学術団体としての活動を続けてまいりました。日本緑内障学会の概要と活動内容を紹介するとともに、今後に向けての抱負を述べさせていただきたいと思います。
 日本緑内障学会の大きな目標は日本の緑内障研究の推進です。また、研究活動を通じて緑内障の本態解明、治療効果の改善を図ることです。そして患者様の視機能改善により国民福祉に貢献することです。日本緑内障学会は研究発表の場である年次学術集会の開催を大きな事業と考えております。加えて、大学・研究機関横断的な共同研究プロジェクトをいくつか立ち上げ、学会主導での研究を行ってきました。日本における緑内障疫学研究として国際的な評価の高い多治見スタディや久米島スタディは日本緑内障学会主導研究の代表です。現在はこうした研究活動は学会内に設置したデータ解析委員会ほかの委員会が管掌し、Lower Normal Pressure Glaucoma 研究(注:眼圧の特に低い緑内障に関する研究)、後期緑内障研究、インプラント手術研究、緑内障関連遺伝子研究、緑内障血流研究、OCT(光干渉断層計)による緑内障の新定義の研究などを実施しております。また、若手研究者の育成も重要と考えており、海外学会での研究発表への補助事業であるフェローシップグラント制度も導入しております。さらに、応募型の研究プロジェクト支援事業も行っており、患者様に還元のできる新しい研究成果が生まれつつあります。加えて、近い将来のビッグデータを利用した医療革命に対応できる眼科診療環境の構築という日本眼科学会主導の新研究にも中核学術団体として参画しています。
 日本緑内障学会は1990年(平成2年)に設立されました。来年(2020年)10月2日から4日にかけて第31回の年次学術集会(久保田敏昭学会長)を大分市内で予定している歴史のある学会です。歴代理事長は、三島済一先生、北澤克明先生、新家眞先生と、著名な眼科学、特に緑内障分野、の研究者が務めていらっしゃいます。日本緑内障学会の前身は、緑内障研究者有志が1970年(昭和45年)に創設した日本緑内障研究会と、日本臨床眼科学会の学術プログラムの一部として1961年(昭和36年)から実施されてきた緑内障グループディスカッションです。この二つの会はともに当初はごく少数の研究者のみの参加であったとのことですが、その後緑内障が眼科医の関心を呼び、両組織が発展的に解消する形で日本緑内障学会が設立されました。1990年の第1回学術集会(大阪)での一般演題数は69題、参加者は568名と記録されています。近年に至り緑内障への関心がますます高まっていることを反映して、ここ数年間では一般演題数170-190題前後、参加者数約1,500から2,000名と大幅な増加を認めています。このように日本緑内障学会は眼科関連のサブスペシャリティ学会の中でも1-2を争う大きな学会に成長しております。
 国内の緑内障診療のレベルを高めることは学会として重要なことと考えております。この目的で眼科医を対象とした緑内障診療ガイドラインを作成し、緑内障専門家の考える緑内障診療時の基本指針を呈示してまいりました。ガイドラインは診療内容の進歩に伴い常にアップデートされる必要があります。そこで昨年(2018年)1月に緑内障診療ガイドライン第4版を、2年間に渡る周到な準備期間を経たのち、発行いたしました。このたびの改訂では診療ガイドラインのあるべき姿とされるMinds方式に準拠して、日本緑内障学会としての推奨の程度を客観的に表示してあることを大きな特徴としています。臨床医家の先生方による積極的な活用を望んでおります。
 一般国民に対する緑内障の啓発活動は緑内障の早期発見、予後改善のために重要です。国内には約460万人の緑内障患者がいると推定されています。残念なことに緑内障はわが国では後天失明原因のトップで、最新の国の研究班報告によりますと、緑内障は視覚障害の原因疾患の28.6%を占めています。しかしながら、現在では緑内障の治療は大きく進歩しておりますので、初期からきちんとした管理が行われた場合の予後は大幅に改善しています。ところが、緑内障の初期には自覚症状に乏しいという特徴がありますので、治療成績向上のためには自覚症状の出る前に発見するための検診等が大切になってまいります。緑内障に関しての重要な国際行事として世界緑内障週間(World Glaucoma Week)が毎年3月に設定され、各国で啓発活動がなされています。日本緑内障学会は従来から世界緑内障週間に合わせて東京都、多治見市、大阪市などで講演会などを行ってきました。今年(2019年)3月には講演活動に加えて、ライトアップinグリーン運動と名付けて全国150箇所でテレビ塔、城郭、市庁舎などのランドマークや医療機関をグリーンに点灯する活動を行いました。このライトアップinグリーン運動については本ホームページ上で詳しく解説していますので、そちらもぜひともご参照いただきたいと思いますが、2015年に5か所で試行的に開始し、2016年は20か所、2017年は44か所、2018年は85か所と順調に運動が広がってきております。マスコミにも取り上げられるなどで十分な成果を得たものと考えておりますので、来年以降も継続していく予定です。日本緑内障学会では、既に来年2020年のライトアップinグリーン運動の準備を開始いたしました。今後ともこうした国民に対する啓発活動を日本緑内障学会として進めてまいります。
 日本緑内障学会は研究推進の観点から国際交流を大切なものと考えています。幸いにして我が国の緑内障研究レベルは高く評価されており、日本緑内障学会の理事を中心とした何名かの先生方が、緑内障研究学会(Glaucoma Research Society)、世界緑内障連合(World Glaucoma Association)、アジア太平洋緑内障学会(Asia-Pacific Glaucoma Society)、等の国際的に主要な学術団体に役員として参加しています。こうした国際的な活動が結実し、世界最大の緑内障関連の学術集会である世界緑内障会議(World Glaucoma Congress)が2021年3月に京都市において開催されることが決定しております。このことは日本の緑内障研究が世界で認められていることのひとつの証左であると大変に喜ばしく思っております。なお、第32回日本緑内障学会はこの世界緑内障会議(World Glaucoma Congress)に合わせて京都において開催いたします。日本緑内障学会は今後ともこうした国際的な学術団体とも連携して緑内障研究を推進してまいります。
 私どもは緑内障研究と患者様のために今後とも努力を重ねてまいる所存です。学会会員の皆様のご支援を引き続きよろしくお願い申し上げます。

 

2019年(令和元年)10月吉日
日本緑内障学会理事長
岐阜大学大学院医学系研究科眼科学分野教授
山本哲也