理事長あいさつ

理事長 相原 一 日本緑内障学会はその前身として昭和36年から続いてきた日本臨床眼科学会時の緑内障グループディスカッションと昭和45年から始まった日本緑内障研究会が発展的に解消されて平成元年に発足した学会です。平成の時代を経て、令和2年で32年目に入り、現在学会員数は2200人を越えております。緑内障は、日本の中途失明原因の第一位であり、また世界的に見ても白内障に次いで第二位で、日本では40歳以上では5%の有病率で20人に1人の身近な疾患です。適切な治療を受けなければ失明に至る疾患で、特に日本の高齢社会では今後益々疾患の重要性が浮き彫りとなってくることと思います。
緑内障は基礎的にも臨床的にも極めて複雑な疾患かつ他分野との連携が大変強い分野であり、未だに多くの謎に満ちている疾患です。基礎的には、眼圧、網膜神経節細胞死が大きなテーマであり、いずれも生体眼内での研究が求められます。例えば緑内障の原因である眼圧に対して、生理的および生化学的機能、房水動態と流出のおよび眼圧上昇メカニズム、日内変動、またその測定方法など様々なテーマがあります。また軸索障害による網膜神経節細胞死についても、その機序や支持細胞や組織との関係、神経保護治療や再生治療など神経細胞を対象とした様々なテーマがあります。そして網膜から視神経を経て外側膝状体、上丘にいたる組織構造全体の視点も必要です。このように眼圧も網膜神経節細胞だけでも緑内障の基礎研究にはとても挑戦的な多くの課題が残されています。
臨床的には、眼圧上昇を来す様々な眼疾患があり病型も複雑で、その多くの眼圧上昇への原因は未解明です。また、その診断と治療についても、OCTの導入と共に眼球構造解析による早期診断が可能となってきましたが、視野視力の機能解析による診断と合わせ、特に進行解析診断が重要ですが、日本に特有の正常眼圧緑内障から近視の影響、遺伝的素因、種々の危険背景因子の評価に基づき、適切な個別化医療を目指す必要があります。そして、眼圧下降治療の薬物治療に多くの選択肢が増加したものの、慢性進行性で自覚症状に乏しい疾患かつ患者様自身に委ねる点眼治療により、治療からの脱落、アドヒアランスの低下が大きな課題となっています。さらに古典的手術の改良を基礎にした技術開発による低侵襲手術治療も発展が著しい分野であり、今後の臨床評価が期待され、緑内障治療の新たな潮流となってきています。「緑内障」とたった三文字で表現されている我々の疾患は、このように本当に多様性に富んだ複雑でかつ挑戦的なテーマに満ちています。
このたび、日本緑内障学会理事長を拝命いたしました。私が眼科医になったのも平成元年であり、学会と同じ歴史を歩ませて頂いたのは大変光栄であり何かの縁だと感じております。そして多くの緑内障の患者様を前に「緑内障」を学ぶたびにその奥深さを感じてきました。ここで改めて、学会員をはじめ全ての領域の皆様と力を合わせ、また国民の皆様と一緒に、緑内障と共に生きて、目の健康を共に守り、人生を共に楽しめるよう、そして緑内障による失明を一人でもなくせるように精進して参りたいと存じます。

日本緑内障学会では現在までの活動を継続しつつ新たなプロジェクトを実現していきたいと思います。

1. 緑内障研究活動推進
若手のボトムアップ研究をはじめデータ解析委員会の各臨床研究、新たな基礎研究の助成をしていきます。また、国際交流を推進し、日本の緑内障研究の更なる向上を目指します。
2. 緑内障啓発活動推進
緑内障は身近な病気ですが、未だ国民の皆様への周知が十分でない疾患です。公開講座や3月の世界緑内障週間におけるグリーンライトアップ活動などを通じて広く緑内障のことを知って頂きます。
3. 緑内障地域連携活動推進
慢性疾患で生涯管理が必要な緑内障の長期的な継続治療には密な医療連携が重要です。ガイドラインの改訂を始めとした情報発信、医療従事者に対する実態調査、教育活動を通じて国内隅々まで適切で持続可能な緑内障医療が提供できるように努力していきます。

2021年秋には緑内障国際団体である世界緑内障連盟(World Glaucoma Association:WGA)と日本緑内障学会の合同開催によるWGC & JGS 2021合同学会が始めて日本で開催され、私が日本緑内障学会を代表して運営させて頂きます。学会員一同一丸となって開催に向けて頑張っておりますので、医療関係者の皆様方のご参加を心よりお待ちしております。

今後とも一層のご指導ご鞭撻のほどお願いします。

 

2020年(令和2年)5月吉日
日本緑内障学会理事長
相原 一